『無職転生』のWeb版を、なろう小説完全初心者の私が実況形式で読んでいく企画です。

これまでの無職転生感想の一覧はこちらからいけます。

前回でついに本編全話を読んだのですが、どうも番外編やら色々があるらしい、と。
読むのは読むとして、今までのようで実況形式で感想を書くかどうか悩んでいたのですが――

感想を書く事になりました。

今回は『無職転生』本編と時間軸を同じにした番外編だけを感想に纏めました。
他に同一世界観の歴史を描いた『王竜王討伐』、『古龍の昔話』という作品もあったのですが掲載は次回に見送り。
なぜなら今回だけで文字数が11,000字を超えてるからです。(ヤバイ)

そのうち最後、「アイシャ編」だけは実は何か色々あって(後述します)現在削除されているエピソード。

存在自体がグレーで賛否両論らしいので扱いに悩んだのですが、読み終わったあとに「これは感想を載せるべきだ!」となりまして、最後におまけとして掲載。

ただアイシャ編、「こんなもの認めねぇ!」という読者もいるらしいので、苦手な方はスルーして下さい。


無職転生 - 蛇足編 –

ウェディング・オブ・ノルン

1 「ノルンの嫁入り 前編」

「は!?政略結婚させるつもり!?」
とオルステッドのドライっぷりに幻滅しかけたんだけど、口下手なせいで勘違いされただけでした。か、かわいい……
オルステッド、文句無しの作中最強キャラなんだけど、絶妙な親しみやすさと寛大さで、私の中で好感度が異様に高いんだよなぁ。

タイトル見た時に「ノルンの結婚か。初登場のキャラとくっつかれても興味ないなぁ」と思ってたんだけど、ルイジェルドと聞いて興味津々だ!
あまりカップリングを頭に入れて読んでなかったけど、運命の人だって。
「ノルン良かったなぁ」と思えるのは、全般的に私の中でキャラ好感度が高い証拠。

3 「ノルンの嫁入り 後編」まで

恋愛小説なら何回かスレ違いそうな所もすんなり進んで、結婚式。
キャラが立ってるので、各々がお祝いを言ったり、幸せそうにしてるだけでグッとくるものがあるな。
本作テーマは番外編でも一貫していて、「才能がなくても頑張ることの大切さ」はノルン視点だからこそ語れる事だなぁ。

それより気になったのはもう一人の妹・アイシャの心情だ。何か色々悩んだり考えたり、ノルンに「負けた」といいながら自分は結婚するつもりがないって、どういう心境……?
類推できる情報すら敢えて絞られてる気がするので、ここらへんの心情は後々語られる事になるんだろうな、と思う。

注釈

当時はそこまで詳細を把握していませんでしたが、ここで引っ掛かったアイシャの心情こそが、削除エピソードの『アイシャ編』で語られてました。

アイシャの心情を除けば、考えてみれば結末まで描かれた話の番外編。
重要な伏線とかもないし、本編と違って気楽に読むやつだな。

こうやって後日談的に色んなキャラの”その後”が描かれていくだけだろうし、あんまり難しい話もないでしょ。
感想は味気なくなりそうだけど、肩の力を抜いて読もう

ルーシーとパパ

4 「ルーシーの入学初日 前編」

私はどうもオルステッドネタに弱過ぎてダメだwww
「娘が心配だ」と愚痴を聞かされて、自分の変装をして見に行けとか提案するの、優しいし面白過ぎるでしょ……

主人公、パウロとの対比もあって主人公は普通に考えると過保護なんだけど、実際家族が狙われたりしてたからね。
過保護になるのも仕方ないよなぁ。

6 「ルーシーの家族」まで

教師「教えた内容について反証も出ているが、まだ実証されきっていないのでこの説を教える。自分が教える事を信じても信じなくてもいい。違ってたら証明して教えて欲しい」

さすが作者さん、教育に造詣が深いだけあって、いつもよりしっかりした文章量で力を入れて書かれてるな。
コダワリを感じる。
こういうしっかりした教師像を示した後、軽く嫌な教師もいる事にも触れてるあたり、バランス取ってる。

最後のルーシーの独白で「多くの人と接する事で色々な事を学べる」事とか、父親が自分に期待してくれないと思っており、子供としてはそれを覆したいという思いを通して「親が見守る大切さ」に触れてるのもさすがだ。

作者さんの教育論、インタビューで色々聞いたらかなり面白いと思うんだけどな。
現代教育を参照した形でもいいし、様々な観点で教育が描かれている本作の描写を引用しても面白いと思う。
先述した「見守る大切さ」なんかはハッとさせられる所があって、普段気にしてない作者さんの年齢が気になるレベルに良かったぞ。

アスラ七騎士物語

7 「婚活のイゾルテ 前編」

顔だけで条件外にするし、「選り好みはしてない」と言いながらかなり条件キツいし、「家柄は気にしてない」と言いながら王族を紹介されてウキウキするという、結婚出来ない女性感がリアル過ぎて笑えねぇ……
偏見的じゃなく、ただただリアルな描写を積み重ねてて怖いわ。

女王に絶対の忠誠を誓う7騎士。その筆頭『王の懐刀』ルーク・ノトス・グレイラット。
これで「うそだろ」と笑ってしまった読者は私だけ……?
お前、政権争いの時に最後スゲー事してたからね。
いや、物語的には許されてはいたし私も納得はしたけども。
何かちゃっかり良い位置にいるなぁコイツ。
嫌いなキャラじゃないんだけど笑っちゃった。

9 「イゾルテとドーガ 後編」

意外な組み合わせ……。
そして驚くぐらい、少女漫画のようにストレートな愛の話だった。
この後の二人がどういう雰囲気なのか知りたいけど、ここで話が終わってしまったのは少し残念。
それにしてもアリエル王女、王族なだけあって本当にしたたかな描写が多いなぁ。

オートマタを作ろう!

12 「人形の歩いた日 後編」まで

タイトルだけで「おぉ、ついにか!」と盛り上がり、主人公とザノバの仲の良さにニッコリ。
ただメインは「自動人形アンの行動に不安を覚えつつ、主要キャラのその後の生活を見る」という内容だったので、読後感的には別に普通の後日談だな!
それでもザノバは念願が叶って良かったと思う。

13 「事務所での一日」

貴重なオルステッド視点での語りだ!
最初は寝るだけでも怖かったという、ちょっと意外で、彼を身近に感じる語りから入る。
主人公の事を認めつつ配慮したり、主人公の家族を大事に考えたり、子供にイタズラされる事も微笑ましく感じたり、オルステッドが今の状態に満足してる感じが丁寧に語られてて大満足!

そして物語終盤で改心した為に、描写が殆どなかった北神アレク。
子供の面倒見がよくて、意外な嬉しさ。
主人公の子供に自分が負けた戦いを臨場感たっぷりに語ってあげたり、「君のお父さんはすごいんだよ」と真摯に説明したり良いお兄さん。
これだよこれ!こういう描写が出来るのが番外編の良さだよなー!

ミリス旅行記

14 「ラトレイア家へのご挨拶」

複雑な内面描写と教訓で作品に深みを出した、祖母クレアの元に里帰り。
何というか考えの改め方が「頑固で不器用な人間が最大限歩み寄った結果」としてかなりリアルで、だからこそ「よく頑張ったんだな」と分かる。
作者さんの中でキャラクターが生きてる事を再確認できた。

15 「アルスのミリス観光」

コッソリ子供だけで街に抜け出して誘拐されそうになったのに、抜け出した事を怒るんじゃなくて「次からは予定を立て準備をして、バレずに安全に戻れるように。挑戦して失敗するのはいい」と諭すの、自立した頭の良い子に対しては理想の教育でしょ。
相変わらずすげぇな……

19 「巌しき大峰のタルハンド」

タルハンド掘り下げ回。
1話で彼の人生がしっかり完結している良い短編。
でも鉱神が当時タルハンドを補助につけなかった理由と、今回鉱神に「同じ工法なら自分の方が格段に良い剣を打てる」と言われて”呪い”が解けたってのが、何か曖昧にしか理解できないな。
どういう事?

鉱神が当時補助を断ったのは「剣打ちを疎かにして補助だけやってもダメ」という意向のはず。
今回呪いが解けたのは、
同じ工法なら鉱神の方が良い剣を打てる

でも工法をタルハンドが教えないと打てない

他属性で補助する自分の道は間違ってなかったが、当時はその練度が足りてなかっただけって事か?

「鉱神に裏切られたのではなく、役に立てる程の力量が当時タルハンドに足りなかっただけ」で、今回は知らない工法を鉱神に教えられた事で「役に立てた」から呪いが解けた?
やりとりを見るに鉱神自身もこの流れを理解していなくて、鉱神の意図していない所でタルハンドが納得してるから分かり辛くなってるんだな。

今回の話だけ、本作が一貫して描写していたテーマと独立して異なった話になってるから、分かり辛いし、浮いた印象がある。
(自分が正確に読み取れていない可能性は勿論ある)

別に番外編なんだしそこまで極端に全部一貫させる必要なんか無いワケで、ちょっとハードルを高くし過ぎてるなこりゃ。

剣の聖地に住まう神

剣の聖地関連で普通の後日談と掘り下げ。
剣神ジノ、いい感じに自分の哲学がハッキリしてて格段に強キャラ化していたなー。

対して女性陣、若い頃は尖ってても子供が出来ると丸くなるし、発想も子供中心になるよね。
それがどこか微笑ましい感覚。
なろう小説でこういう感覚の話を読む事になるとは思わなかったけど……

ナナホシのグルメ

23 「焼きおにぎり」

これ、純度100%の飯テロだ……!
驚いたことに、普通に食事描写の質が高い。
味だけじゃなくて香りとか風景とか、食卓の雰囲気にも触れてるの、分かってるな!
食事のウマさは総合力なので、こういう描写が入った方が読んでて食べたくなるのだ。
素晴らしい。

25 「サンドイッチ」

腹が減るけど読みやすいのでドンドン読んでたら「アイシャがアルスと駆け落ち」だと!?
予想外過ぎて驚いた。

そしてこれか!これが削除エピソード・アイシャ編の片鱗というワケだ!
一体アイシャにどういう心境の変化があったのか気になる……

26 「たこ焼き」

食事回として安定した面白さなんだけど、これかなり作中年数が経ってて、主人公の子供が結婚してたりと、さりげなく重要情報が連発されてるんだよな。

ペルギウス王、伝説の存在なのに異世界グルメに興味津々で、それに合った飲み物用意するの、良い感じにキャラがくだけててニッコリ。

最後の巣立ち

30 「進路」まで

あ、子供一人ニートだったんだ。
主人公、これだけ教育に力を入れてても「ニートになる事もある」って展開を入れるの地味にすごいぞ。
しかもそれを教育や本人の”失敗”と捉えてなくて、それも受け入れようとする度量の広さもある。
全国の親御さんに勇気を与えてくれる話だ……

クリスの学園編、これで普通に一本かけるぐらいの密度を省略してるけど、ここでも随所に本作のテーマが見え隠れしている。
そして「成長は変化だ」「悪い変化が悪い結果をもたらすとは限らない」、極めつけに「前世でニートだったから今がある」と、蛇足編最終章にふさわしい、名言のオンパレードだ!

・過保護にしない
・成長できる環境に放り込む
・親が及ぶ事は全力でサポートする
・その上で、起きた事を受け入れる。

その結果引きこもりになる事もあるけど、その時はその時。
全国の子育てで悩んでる親御さんに聞かせたい良いメッセージだし、若い人には覚えてて欲しい姿勢だ。
かなり勉強になる。

31 「子離れの時期」

なろう小説で「娘が婚約者を連れてきた時の心理描写」をここまで丁寧にやるか!笑
以前冗談で「娘はやらん!」を絶対やるみたいな事言ってたけど、実際娘が連れてきた人を無碍には出来ないよね。
最後行きつく先が「相手がどんな人物かしっかり話をする」なの、本作らしいなー。

32 「最後の巣立ち」

最後に子供が全員家を巣立ってから、夫婦4人(変な数字だ……)でしんみりする雰囲気いいな!
そりゃ「大役を終えた」って感じになると思うよな、うん。
子供時代からずっと描いた物語が、ついにここまで辿り着いたか。
本当、一人の人生を最初から最後までしっかり描いてくれたな!

これで蛇足編終わりかー。
最終章で、本作を統括するかのような教育論。
何より子供を全員送り出した後の家の雰囲気は、約300話ずっと読んでないと得られない、素晴らしい感慨深さだ。
こんな読後感を得られるなんて、他の長編作品でもそうそうないぞ!
貴重な読書体験で、ここまで無職転生を読んできて良かった。

ジョブレス・オブリージュ

お、ニートだった事が言及されたジークの話か。
欧米とかで「上流階級の義務」を示す「ノブレス オブリージュ」をジョブレス=無職にしたのね。
この”義務”って色々解釈があって最近は社会的責任みたいな意味が多いけど、本作だとどういう意味なのか……

1話 過去の出会い

純粋に正義の味方に憧れて努力した少年か。
やはり純粋さや真面目さは諸刃の刃だなぁと思う。
残念ながらドロップアウトしやすい性格で、相変わらず作者さんは感情と行動に納得感を出すのがうまい。

そしてパックス!子供の方だ!
蛇足編で触れられてた「親友のために王竜王国へ」ってこれか!

3話 現在の正義の味方

ムーンナイト!ジーク、こじらせてるなぁ。
別作品かのようなヒーローものっぽい雰囲気で、地の文もノリノリだ!

さてこれ、どういう展開するんだろう。
ジークの心情を考えると色々複雑なんだけど、どうやって目を覚ましていくのか楽しみだ。
まさかヒーローもので終わらんでしょ。

4話 過去の親友

子パックス、言われてみれば「奴隷に産ませた子」と「奴隷市場にしか居場所がなかった男」を親に持つのか。
壮絶な生い立ちだし、国での居心地も悪かっただろうな。
これも「環境」と「家族」の一側面だけど、目を背けるのではなく理解を深めようとする姿勢で、本当にパックスが聡明なのが分かるな。

8話 現在の結婚

ニートの引き金となった?学生生活を振り返りながら正義ごっこをする日々。
そろそろ状況動くか?って所で、「金のために30歳年上と政略結婚させられる若者を助ける」か。
気持ちは分かるけど、それは腕っぷしが強いだけの無職の手に負えるかなぁ。
何か若さ故の危なっかしさがある。

10話 過去の卒業

ジークがニートの理由が発覚。
これはまた……繊細な表現だ。
「偉大な父に比べて僕ら子供は劣悪」という考え方に、「父の”期待している”」に対する誤った受け止め方。
問題は学校ではなく、伝説的な親のプレッシャーか!
父であるルディにそんなつもりはないんだろうけどね……

11話 現在の師匠

北神アレク、嘘つけない単純な性格は面白いし、過去の失敗もちゃんと受け入れてて好感持てるな。
番外編で改心後のアレクが色々見れたのは嬉しい。

あとジーク、正義ごっこである事は内心受け入れてたんだね。
さて、”偉大な父”に踊らされてる感じだけど、ここからどう展開するのか……

12話 現在の父親

壮大な前振りの茶番を軽くスルーしての親子の対話なんだけど……うわー、ヤバいな。感動した。
本作読んでて一番グッときたかもしれない。

父親ルディの心情が、端々からよく伝わってくる。
息子の悩みを聞こうと思って色々親身に考えて、恐る恐る悩みを聞き出して、最後に安心してご機嫌になってる。
父親ルディの気持ちを考えるともう……

父親って「年頃の息子にとって親なんか鬱陶しいに決まってる」と思っちゃうよね。
息子に「酒の力を借りるのもアリ」と言っておきながら悩みを聞くまでに自分がグビグビ飲んでるし、聞けたら嬉しくてまた大量に飲む姿が等身大の父親って感じ。
最後のシーン、泥酔しても解毒魔術断ったりして微笑ましかったよー

「一番うまいのは、家族と食べる料理」
「パパの敵になってもいい」
「お前が不幸になったって事は、俺が守れなかったって事」

いやぁ、ルディの家族愛がビシビシと伝わってくる良い章だった。
そして最後に、「話すべき相手に話せば、悩みはあっさりと解決した」
本作は本当に一貫している。

14話 現在の親友

フッ切れてどこかテンション高めのジークに、月光両断のバカみたいな威力が、何か爽快感のあるスッキリさでニヤニヤして読めたぞ。
ジョブレス・オブリージュ、前半の筆致は明るいながらにどこか閉塞的だったんだけど、最後にきてそれを吹き飛ばす解放感が良いな。

最終話 未来の英雄

ジョブレス・オブリージュ読了。
自分の国を手に入れる野望の実現目前まで来たパックスと、それを支えて列強5位になったジーク
詳しい続きを書いて欲しいぐらいだけど、この番外編はそれが主軸ではないので、これで終わりか。
前半はどうなるかと思ったけど、素晴らしい読後感だった。

総括すると「一人で悩まず相談しよう」という話だったんだと思うけど、これって大事だし深い話なんだよね。
家族の誰かにプレッシャーや負い目を感じて、疎遠になったり塞ぎ込んじゃう事は現実あると思う。
でももしかしたら、相手もこちらに遠慮してるかもしえれない。話し合えば見える事もあるよ」という、素敵なお話だった。

そりゃ現実は残酷で、味方になってくれない家族もいるかもしれない。
だから全ての真理という訳ではないんだけど、それでも「話し合いの大切さ」って当事者には気付き辛い。
外部から言われても、なかなか説教くさくて反発しがち。
でもここまで付いてきた読者は今回の”相手”であるルディの立場と家族愛は分かってるし、これを読んで気付きが得られる人も中にはいるんじゃないかな。

私は本作読んでて「説教臭くない」という褒め方を何回かしてるんだけど、今回もその最たる例だった。
ジーク視点によるヒーローもの被れな語り口で、受け入れやすい書き方だったよね。
これが無職転生本編で、且つルディ視点だったら、ジークがダメな奴に見えすぎて響かない読者もいたんじゃないかな。

という事でジークに共感できる読者をターゲットにした作品なんだけど、本編主人公という事もあって親であるルディの気持ちも推し量れて、それにもグッときた。
ルディの内面描写は実は少なくて、お酒の量や頼み方で不安や喜びを客観的に表すぐらい。
でも言葉の端々に家族を思いやる気持ちが溢れてて感動したよ!

いやぁ、面白かった。番外編でも読んで後悔はないな。
むしろ本編全部読んだ人は絶対に読んだ方が良い感じだ。

クリスマス短編

こちらで後悔されている公式二次創作、との事。
ここまで読む気は本当に無かった(何回も言ってる気がする)んだけど、ブログ用に感想を追記。

サンタクロースの正体
(2014年・無職転生クリスマス短編)

「この世界はサンタとかないだろ」と思ったら、ルディが話してしまったのね。
信じてしまうエリスが微笑ましいな。

オルステッド唐突に出てきたな!
なんで唐突にサンタの格好してプレゼント持ってきてるの。
ほ、微笑まし過ぎる……!
さすが公式二次創作、良い感じにキャラ崩してきてるな。

トナカイの気持ち
(2015年・無職転生クリスマス短編)

オルステッド「俺がサンタクロースだ」
これは笑うだろ……

ルディのメモをこっそり読んで子供達の欲しいものを探って、わざわざ用意してくれたのか。
優し過ぎるぞ!

プレゼント配りでドタバタするかと思いきや、普通に配り終えるオルステッド。
そう言えばこの人は作中最強のスペックだったわ。

サンタクロース・ニューカマー
(2016年・無職転生クリスマス短編)

そうだよね、プレゼントをこっそり置いて、喜ぶ子供達を見るのはサンタの醍醐味でもあるよね。
てっきりジークと一緒に配るのかと思ったら、3度目のオルステッド登場。
作者さん、完全にオルステッドを面白キャラとして扱ってる。

聖夜のケイオスブレイカー
(2019年・無職転生クリスマス短編)

こ、これだけメチャクチャ良い話……!
ナナホシの孤独感を考えると、パーティしてもらったり、色んな人から手紙もらったのは嬉しいだろうなぁ。
そしてオルステッドはサンタを気に入っているとしか思えないぜ。


以上、コメディエピソードだから感想も書きつらいけど、オルステッドファンには満足度高いエピソードだった。
短編としては4つだけど、どうも作品中では十年以上サンタをやってたようで、毎年オルステッドがサンタを楽しみにしてルディに譲ってないのは想像しただけで面白い。

アイシャ編(削除エピソード)

よし、苦手な人はブラウザバックだ!

アイシャ編、最近読み始めた私が言及するのはおこがましいんだけど、知らない方の為に説明すると削除されたエピソードです。
削除の直接的な理由は「小説家になろう」のガイドラインに抵触した事。
ただその前から読者からの反対意見が多く、作者さんのコメントを見ても、アイシャ編は反省点があったようです。

そんな既存読者の地雷、読む事はおろか感想なんて嫌だ……と思ってたんですが、ありがたい事に「読んで欲しい」という声を多数頂きまして。

「非公式として読む。感想は素直に書くけど、ダメなら本編の評価とはリンクさせない。」という方針で読む事にしました。
こうした事前情報を持って読むの初めてなんで、怖かったんですが……私は肯定できたので、ここに掲載する事にしました。

まず創作物は自由なものだと思ってます。
だから余程の事がない限りは認めないとか許せないとか、そういう事ではないと思うんですよ。

24 「抵抗」まで

ゆ、許せない……ッ!なんだこの展開は!

  • 年上で憧れのお姉さんが優しく筆おろししてくれる
  • 欲望の求めるまま何回も応じてくれる
  • 学校サボって昼下がりからお楽しみ

中学生男子の理想じゃねぇか!
う、羨まし過ぎる。アルス、許せない……ッ!
ねぇ、こいつヒトガミの手先じゃない?

まぁ25%ぐらいは冗談として。
私がハーレム展開NGだったのは「作品評価項目の毀損(好感度高かった主人公が性にだらしなくなった)」なので、これ自体は数ある創作展開として別に拒否感はないですね。
今の所は、ですが。

でも当事者たる主人公は大変だ。
生理的嫌悪感と、理屈での正当性とのせめぎ合い描写が相変わらずお見事。
そして「その理屈なら他の子供もお願いね」とアイシャ理論を崩したのがシルフィってあたり、さすが作者さんはキャラを把握しているので言動が適切。
これを切り出せるのは家庭内ではシルフィだよなぁ。

25 捜索

で、駆け落ちか。さもありなん。

徹底しているのが、「主人公がモヤモヤを言語化できず話し合いを尽くせなかった」事がすれ違いの理由とされている所だ。
本当に主人公に厳しいお話……。
しかし世界観的に近親婚がOKな中で、現代人感覚を持つ主人公がこの世界観に沿ったアンサーを出せるか?

あとザノバの「家族で話が違えた時は腰を据えて話せ。間違った言い分を聞いて見守れ」の説教が良いな本当に……。
作中で、この説教を最も説得力を伴って言えるのはザノバだよなぁ。
やっぱりザノバは主人公に言うべき事をしっかり言えるあたりが「親友」って感じで良いね。

28 「アイシャ・グレイラット」まで

アイシャ編読了。
反発した人が多いという事実が嘘のように面白かった。
いや、これは本作には必要な話だと思う。
削除になってしまったのは作者さん内心無念だったんじゃないかな。

この話は
・優秀+生まれの特殊性が故の歪み(教育と環境)
・特殊な関係性だからこそ描ける家族の形

と、本作テーマをいつもとは別の側面で色濃く描いている。

環境と教育について、様々な視点で描かれていた本作だけど、「生まれつき天才なまま大人になってしまった」「にも関わらず人に仕える事を親から強制されている」という非常に特殊ケースであるアイシャについて今まで描かれてなかったのは、まさにこのアイシャ編でしっかりと描写するつもりだったのだろうと思う。
だからこれが削除扱いってのは、読者としても寂しいな。

優秀な人は周りと違うから何かと歪みやすい……。
しかもその方向性を「主人に仕える」という形で親から定められていて、幸いルディが優秀だったのでアイシャは納得できたんだけど、むしろルディが優秀だったからこそ「優秀な者以外は認めない」という人間性が育まれてしまうのは非常に自然な事なのだ……。

大体の天才は途中で失敗して目を覚ます事ができるんですよね。
その失敗で起き上がれない人もいるけど。
でもアイシャのように本当に優秀な場合、能力と自制心をもって理論的に行動すれば対外的には失敗しない(しても露見する前にカバーできる)ので、なかなか目が覚めにくい。
今回アイシャの場合は、制御した経験のない欲望と、妊娠によって、ようやく失敗が経験できたって事ね。

「優秀な自分は人と違う」んだから、自分とは違う人の気持ちなんて考えられるワケがない。
思考は読めるけど、“人の気持ち”なんて自分の判断基準(=能力)に関係ないものを推し量る気にもならない。

アイシャはこうした徹底した能力主義なので、「家の事を考えると自分は処分した方が良い」「子供と引き離すだけじゃヌルい」とか、自分の事なのに論理的で冷静な意見が出せるワケだ。

でもそういう優秀なアイシャの感情をゆさぶるような「ノルンの結婚」や「アルスとの出会い」、「手痛い大失敗」を通して、感情の所在を自分にも認められたので、能力と理屈優先で人を見下す事をやめられるようになった、という事かな?
かなり緻密な仕組みなんだけど、確かに読者の理解は得られにくいな……


あと本作テーマの『家族』ね。
アイシャ編を読んで、ようやく遠まわしに「ハーレム展開は必要だった」と確信した。
作者さんは一般的な形だけに囚われず、色々な形や視点で家族を描きたかったんだな。
「標準的な祖父母・両親・子」の家族だけだとどうしても固定的で、本当の意味で色んな角度から家族を描く上では、これは制限になってしまうんですよね。

だって今回の話、パウロ視点だと“妾の子”と”本妻の孫”というドロドロ展開ですよ。
「ファンタジー世界」で「小説」じゃないとなかなか描けないんじゃないかな。

そうした(現代日本的に)歪んでいるけど確かな愛情を描く事で、周囲の人(特にリーリャ)含めた色々な感情や、変わらず大切な事を、描きたかったんだと思う。

ここらへん、初読実況の勢いに任せた殴り書きになっているので、纏まってないかもしれないけど、まぁ評論じゃなくて初読感想なのでこのライブ感のままいきます。

でもまぁ……リーリャさんは可哀相だったよね。
「卑しい淫魔のような血」とか言っちゃダメだよホント。
これが一番読んでて辛かった。
リーリャさんが生まれた孫に喜んでる描写があって良かった……

さて、いわゆる標準的な形じゃない家族像を描いた事で「普通の家族像描けよ!」という意見はまぁあるとは思う。
でも実際家族というのも色んな形があって、創作だからこそ描けるものを通して「読者に考えさせる」というのは、創作の役割として大切なものなんだよね。
今回はそういう作者の意気込みも感じた。

真の意味で「様々な視点で見た家族」をテーマにするなら、一夫多妻制の中で「夫も妻もうまく付き合っていこう」「子供もみんなで面倒見よう」という事を本編中で描き切れてるのは意味がある事だと思う。
前に「ハーレムは必ずしも必要ではなかった」と結論付けたけど、アイシャ編込みでようやく「必要だった」と思えました。


あと、今回でルディが前世の自分を完全に脱却できている。
言われてみると確かに「前世の自分を内緒にしたまま」という事実は「話し合いが大事」という本作テーマには反していたよね。
別にこれはアイシャ編でなくても良かったけど、「妻に前世を打ち明ける」という話は確かに作品を通してどこかで必要で、アイシャ編削除でその機会が失われたのは痛かったと思った。

意見まとめ

●今回の話は
「天才なまま大人になってしまった人間」
「様々な形の家族」
「主人公が前世を妻に打ち明ける」
を描く上で、重要な話。
●近親婚や展開についての反発はない。
 理由は「私の評価していた項目が減損する内容はなかった」

以上!
いやぁ、個人的に削除はもったいない話だったな
でも反対した人の価値観も分からんではないから、文句は言えないか。
そして既読者さんが私にアイシャ編の一読を勧めたのも何か分かるぞ。

あとは本当におまけ中のおまけ、『王竜王討伐』と『古龍の昔話』をまとめて無職転生の初読感想も終わりだ。

あと、このページに最初に辿り着いた方がいたら、過去の無職転生感想の一覧はこちらから読めますので、良かったら最初から見てあげてください。
なろう小説偏見マシマシの人間が徐々に手のひらを返す様が見れます。

フジカワ ユカ (著), 理不尽な孫の手 (その他), シロタカ (その他) KADOKAWA (2014/11/23)
理不尽な孫の手 (著), シロタカ (イラスト) KADOKAWA (2014/4/24)
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