画像は書籍版から。
無職転生Web版の初読実況感想その4です。
ノベルが苦手な人は漫画版もどうぞ。

前回、本作最大の伏線大解放+ドンデン返しにやられて、ついに最後まで読んでしまった。
今までと毛色の違う20章ザノバ編と21章クリフ編、そして手に汗握る最終章と、最後まで飽きさせない作りだ!
最後に本作を少し振り返って、おしまい。

今回だけで合計9,200字ぐらいあって、分割しようかなとも思ったんだけど、あんまり小分けするのもアレなので一気に放出!
ここまでついてきてくれる人は大半が既読者だとは思うんだけど、覚悟してお付き合いください!

ここまでの感想はこちら。


第20章 青年期 ザノバ編

第200話「ザノバの決意」

うわ、これ面白いな!

今回は前回までと逆で、望ましい歴史にするために行動が制限がかかる事もあるのか。
歴史が足枷になるって事だ。
今回、ゴール地点すら読者にはまだハッキリ分からない中、更に「パックス殺すな」ってのは状況によってはメチャクチャ難しいぞ。

そしてザノバの成長が格好良い。
登場時は自らの義務なんか考えず自分のやりたい事だけやってんだけどね。
今回一国の王子として義務とか責務とかを自覚していて、素直に応援したい。

ちょっと台無しな発言なんだけど、言うても物語。
オルステッドと戦っても死ぬとは思わなかったし、アリエルも王になるとは思ってた。
これまでの話って、経過はもちろん気になるものの、着地点の予想はできたんですよね。

今回は本当に着地点の予想もできないぞ。
国を防衛しつつ、ザノバを生存させる?
パックス排除せずにザノバが無事でいられるかというと……難しくないか?

第206話「戦争」まで

考えてみれば戦争描写は本作初めてだ。
地形戦略や魔術レジストの重要性など、有り得そうなリアリティを差し込んでくるのは流石。
もちろん圧倒的な魔力がある主人公がいるので圧勝なんだけど、それでも単純な無双描写でなく、状況適応力&魔力量で戦術面で有利という形にしたのは素晴らしい。

何より主人公、殺人を躊躇する普通の性格なのでショックを受けるのも現実的。
読者としてはウジウジして欲しくないけど、主人公の性格を考えると必要なプロセスだ。
でもショックを受けながらも仕事の手は緩めていないので、読んでてイライラしない。
「ショックを受ける描写は入れるけど、今回の話のメインではないので、行動自体は鈍らせない」のは素晴らしいバランス感覚。

第207話「火急の知らせとザノバの真意」

うわ、そう来たか!
クーデター返し!これは読めないわ。

それにしても、戦争や政争とか、作品の本流でない箇所を簡潔に分かりやすく纏めるのが本当に上手いな。
描写のメリハリが素晴らしい。
あくまで「本作は主人公ルーデウスの物語ですよ」って事なんだろう。
創作素人ってそういうの全部書いちゃうよね。

第212話「喜んでいいんだ」まで

20章終了。
何ともハッとさせられ、考えさせられる終わり方だった。

作中でも、そして読者にすら「誰からも見られていない人物」にこういう確度で焦点を当ててくるとは思わなかった。
私が”その3”の最後で「みんな大嫌いパックス」と表現したのがこんなに効いてくるとは思わなんだよ……。

パックス初登場時の本作序盤、ロキシーもそうだったけど、それに同調して読者たる私も一貫してパックスを「ダメなモブ」として見てたんですよね。
その後のリーリャ救出編でもパックスは人格歪みまくってたし、それ自体は当然だと思う。
でもそうなった理由・背景等は全く想像してなくて、「ダメなやつだから、そうなんだろう」と。
人物として彼を見ていなかった。
創作を読む上でいちいち嫌な人物の背景なんか想像しないし、自然な事ではあるんですが、そうした「ダメなキャラはダメと思考停止でレッテルを貼る読者」に一石を投じられた感じです。

家族や好きな人に見てもらえず愛されず、努力しても報われず、自己肯定感を奪われた人間が何を考え、どうなるか。
読者含めた「みんなの嫌われキャラ」がその一例を見せた事で、本作テーマである人との繋がり、環境、教育、家族などの重要性がいつもと別側面で映し出された章でしたね。

「自分は誰も見ない」「相手も見てくれない」はどっちが先かは別として、当初のザノバも「自分は誰も見ない」人だったんですよね。
ザノバはその後、自分を見てくれる人との出会い、弟子の教育(教育で変わるのは生徒だけでないのだ)で変わっていった、という対比も見事。

またザノバに限らず、本作の主要人物は基本的に他社との関係の中で良い方向に成長したり、家族や環境に支えられてきた人達ばかり。
前世で類似した経験を持ちつつ、転生後に家族と環境に恵まれた主人公。
同じ王族でありながら、周囲に支えられて王女になったアリエル。
本作の主要人物、何らかの要素がパックスと対比できる事が多い。
こういう存在を描写する事で、本作の人物描写の深みが一気にアップしたと思います。

これ、やろうと思えば無限に説教くさくできるんだけど、これだけ入念に「みんなの嫌われキャラ」を用意して今回の展開を見事に実現させたのに、極力「読者に考えさせる」という着地点を選んだのはスゴイ。
ただあまりに解釈をブン投げ過ぎると置いていかれる読者おいるので、主人公には「少なくとも家族同士はお互いを愛し、味方でいよう」と帰結させたのも丁度良い。

まあしかし、今回の話は緻密。
パックスのキャラ付けやザノバの成長。
どれも本当に自然に配置されていて、本章のために最初から色々伏線を練っていたと考えると、作者さんバケモノだな。

さて、主人公が最後に分かりやすく纏めてくれたけど、次章から「望ましい歴史のためのフラグ立て」から「戦力強化・仲間集め」に目的変更だ。
ここらへんの軌道修正を読者に分かりやすく提示して、意識変更を促すのはとても丁寧で、頭が下がりますね。

間章

ミリスに行くまでを描写した間章。
イヤ~な雰囲気が漂う母方の実家呼び出しに、陰湿~な印象があるミリス教団と、正直に言って全くワクワクしない滑り出しだ!

唯一の希望はクリフ先輩。
前章のザノバ編でザノバのキャラクターに更なる深みが出たので、今回もそれには大変期待しております。

第21章 青年期 クリフ編

第218話「ラトレイア家」まで

母方の祖母クレアが予想通り嫌なやつだった。
主人公と同じように、読者としても最初は想定内の嫌さだったので我慢できたんだけど、こいつぁダメだ!

ただ前章のパックスに複雑な教訓を得てしまった身としては、クレアの立場とか、行動背景なんかを自然と考えようとしちゃうよね。
作者の手のひらで踊らされている気がするぞ!

クレア、徹底したお家至上主義なのかな。
二度と登場して欲しくないけど、彼女の作劇上の役割は何だろう。
家督だって本作のテーマである”家族”の一側面ではあるし、彼女を取り巻く”環境”も従来の主要人物とはかなり違って見えた。
本章が終わった時に、クレアにどういう印象を持ってるかだなー。

第221話「しらばっくれる」まで

ゼニス誘拐。
クレアが本作において珍しい程の悪役ムーブで、逆に「一体どんな裏があるんだろう」と疑問を持っちゃうの、ある意味作品への信頼度が高い証拠だ。

頭に血が上っても一歩手前で踏みとどまる主人公は大人になった!
「周りに相談して頼る」というのは十分に突破口になり得るよね。
本作が一貫して描写している、大事な教訓だ。

第223話「ひっくり返して玉を拾う」まで

まさかの展開から流れるような1対8!
最初ちょっと苦戦してたのに、一式魔導鎧があまりにも強過ぎる。
223話にして、初めての無双描写じゃない?
主人公と同じく、ストレスの溜まる展開がずっと続いていたので読者もスッキリ。
ここらへん、読者感情のコントロールが上手いと思う。

第225話「何を迷う事があるのか」まで

な、何も分からない……

裏で手を引いていた教皇は腹立つけど、スムーズに問題解決。
クレアにも意趣返しできてスッキリ!
では、終わらないって事?

読んでいて主人公に完全に同調して「何か違和感が……やりすぎか……でも許せないし……」と一緒に翻弄される。
今回、本当に読者感情の把握と操作が絶妙だ。

第228話「裏切り者に逃げられて」まで

21章クリフ編終了。うん、面白い。
今回も作品テーマをいつもと違った角度で扱った章だった。ザノバ編から立て続けて、作品に深みを出してきたなぁ。

直前で回避されたものの、今章は私が先に触れた「周りに相談して頼る」という行動を取らなかった場合の悲劇と苦悩が描かれていたと思う。

「それが善性と気遣いから発生した行動であっても、周囲に頼らず、一方的に事を運ぶと、結果として単なる暴走に終始してしまう事がある」という事だと思う。
今章、主人公がしきりにアイシャに確認を取り、適宜自分の考えを修正したり、突発的な行動を思い留まるシーンが挟まれたのも、これに対比させる為だったのか。

226話のクレア視点での解説は非常~に丁寧。
幼少期からその思想と価値観について順を追って説明している。そこまで遡る事で、今章の行動が彼女の中では一貫して”しまっている”事がようやく分かる。
誰でも気が付かないうちに、クレアになり得るのだ。
というような話に私は感じた。

ザノバ編以上にギリギリだが、今回も説教くさくない。
というのもクレアの失敗に対しては「もっといいやり方はあったはずだ。一杯、色々、あったはずだ。」と主人公の独白があったのみ。
上から目線の結果論で「こうするべきだった」と語られるシーンが控えられている
今回も読者に投げかける形を取りバランスを保ってますね。

そしてやはり予想通り、クレアに対する私の感情も絶妙に緩和されたぞ。
作品内で実は良い人だった!みたいな扱いをされたら私も反発したんだろうけど、「嫌な人で、間違っていた」と作中でちゃんと明言した上で、理解を示せるように語られちゃあ、もう仕方ない。
今回はいつも以上に作者さんの掌の上で踊らされた気がするぜ……

あとはもう、神子によるゼニス視点の語りは当然のようにグッときましたよ。
えぇ。仕方ない。みんなそうだろ!


あとギースね。
驚いたけど、その一方で「彼の価値観ならそういう事も有り得る」と思わせるキャラ描写が既に作中でされており、意外なほど違和感がない。
これってすごい事だよマジで……

実はヒトガミの手先だった!というキャラを作ります。
戦闘力はないけど敵に回ると驚異で、裏切っても違和感がないようなキャラ付けにして下さい。
でも好感度は高くして下さい。

と言われるとするじゃないですか?
無理でしょそんなの。

でも出来てるんですよね、なんだこれ。
本当に入念な仕込みで、作者さんがすご過ぎる。

第22章 青年期 組織編

第233話「激闘、魔王アトーフェ」まで

・国と対応以上に交渉
・魔王を撃破⇒配下に

外面だけ並べると、偏見的なろう無双だ。
でもここに至るまでの233話、苦労と挫折を重ね、周りの協力を得て辿りついた結果なので、読んでいて全く違和感はない。
今回の成果も周囲の協力あっての事だし、納得できる過程をしっかり描いてるので感慨深いものがありますね。

第238話「二つ目」まで

22章組織編終了。
次は決戦編……って、実質最終章的なやつじゃないか!
「80年後にラプラス倒してヒトガミに会敵」というゴールが示された時点でずっと疑問だったんだけど、これ……どうやって終わるの?
80年も待つ感じじゃないんだけど。
この流れだとギースと決着付けて終わるのがせいぜいじゃない?

本章のナナホシの帰還不可についてもそうで、遥か未来にループしている篠原秋人の設定とか、そんな先の話をしても混乱しない?
今回死神に協力得たり魔王を味方につけたりしてるけど、これも終わりまでに活かさないと本章やった意味がないし……。
意味のない話を描く作者とは思えないし……

うーむ、ここに至るまでの物語は基本的には楽しめてたんだけど、終わり方について不安が出てきたぞ。
本章の要素を活かしつつ262話で完結って、出来るか?

せっかく世界やキャラクターに没入して結末が気になってきたのに、仮に「後は後世に任せるEND」になったとして、私は納得できるんだろうか。

それでも「ヒトガミとの決着がつかなくても納得できる結末」はあるし、逆に「ヒトガミと決着がついても納得できない結末」もある。
たまに風呂敷を広げるのが上手く、畳むのが下手な作家っているけど、ここまで見事な伏線回収をしている作品だしなぁ。
色々予想は出来るんだけど、まずは先を読むか……

第23章 青年期 決戦編

第二百四十三話「冥王ビタ」まで

冥王ビタ、こにきて可哀想なキャラ出たな
本作では珍しく、完全な棚ぼた展開で撃破。
あまりに突然かつ都合良すぎて、自分自身で能力とか狙いとか敗因を語らされるという……
作中トップクラスに扱いが不遇で笑ってしまった。
登場少なかったけど、むしろ印象に残るわ。

第244話「疫病」

クリフ登場による安心感と「これで何とかなる感」がすごい。
ただこれはむしろ、その直前までの閉塞感の演出が優れてるからだと思う。
解決の糸口が見えず、時間だけが過ぎ、他の問題も迫ってくる。
直接的な表現を使わず追い詰められていく描写が上手い。
そこからのクリフ登場という、描写のメリハリで安心感が描写できてるんだと思う。

第254話「アレクサンダーvsルーデウス」まで

最後、主人公が「ここぞ」という場面においての初勝利!
確かに負け癖というか、やる事・守るものが多いが故の勝負弱さがあったので、それを自覚した上で乗り越えたのは成長だなぁ。
と言っても相手は片手片足潰れてたワケで。
主人公を徹底して最強キャラにせず、世界を広く見せようとするコダワリを感じる。

第259話「戦いの終わり」まで

23章決戦編終了。
一気に読んでしまった。こ、濃かった……。
無理ゲー感のあるラスボス闘神鎧に対して、うしおととら最終戦を彷彿とさせる「全ての出会いに意味があった総力戦」だった。

でも本当に全てを賭して戦って、それでも最後は止めきれずオルステッドに任せるという決着にさせる事に驚かされた。
最後の最後まで「主人公は最強ではなく上がいる」という描写を一貫させていて、脱帽ですね。

それにしても読み終わってここまで満足度と疲労感(ずっと力入れて読んでた)が高いのは久しぶりだ。
あとちょっとで終わりか。何か寂しいな。

最後の締めに4Pが行われたようだけど、もうみんな合意だし、主人公もよく頑張ったからご褒美があってもいいでしょう。
私も吐かなかったよ。

最終章 完結編

エピローグ「プロローグ・ゼロ」まで

全部読みました。
うん、本当に面白かった。
懸念材料だった「戦いの途中で物語が終わって大丈夫?」についても、これまでの功績や最期のシーンも描かれており、当然のように問題なし。
ヒトガミ撃破まで描く事はむしろ蛇足かもしれないと思えるぐらいの満足感だ。

最後のプロローグ・ゼロについては、主人公が転生した理由が発覚。
別の目的で行われた過去改変の副作用って事ね。

あとはコレ、別の物語に繋がるって事?
どうも作者さんは同じ世界観で他の作品を執筆してるらしい?ので、それに繋がるのかな。
私は本作しか読んでないので分からない。

ただ、作中での描写(特に戦争・政治面の描写省略)から察せたけど、主人公ルーデウスの物語としては十分完結している。だからこの世界観の物語が続く事に不満はないかな。
というより、一生のうちで全てを解決するなんて普通無理だよね。
「主人公はあくまで世界の中の一人」というスタンスが最後まで一貫していて、納得の終わり方だった。

『無職転生』を振り返る

「面白かった」で終わってもいいんだけど、元々はなろう系小説の検証目的で読み始めたので、自分の中で面白かった所や偏見が覆った所をちょっとだけ。
ただ単純に作品が優れていたので、恐らく「なろう系がどんなものか」という目的は達せなかったとは思う。

本作の面白さを支えているポイントは以下の4点かな。

  1. 作品テーマが一貫してしっかり描かれている
  2. 伏線の貼り方・活かし方が上手い
  3. 読者感情を押さえており、キャラの心情も掴みやすい
  4. 一貫した作品テーマに対して、章毎に違う読み味

1.作品テーマが一貫してしっかり描かれている。

これまでも折に触れて書いてきたけど、
・家族
・各人に各々の事情がある
・周囲への相談により状況を突破する
・適切な教育・人間関係による成長

これらテーマ、敢えてひとまとめにすると『人の絆』が最序盤から最後まで一貫して、様々な角度で描かれていた。

本作、「自分だけがチートで無双」というなろう偏見とは真逆だった。
主人公は優秀だったけど、自分より強い人が常に横にいて、仲間との協力・相談がなければ困難が突破出来なかった。
傲慢さによる単独先行はなかったけど、暴走して周囲への相談を怠ると必ず失敗してましたからね。

主人公に限らずあらゆる登場人物の様々な出会いが、成長と物語を生んでいた。
全編通して様々な形で『人の絆』を見れたから面白かったし、だからこそ作品世界が内包する魅力や歴史に厚みが感じられたんだと思う。

最後に主人公の功績を振り返る時でも、「多方面で功績を残したが、各分野においてはそれぞれ主人公より先に名前が挙がるものがいる」と、主人公一人で成し得た功績ではなく周囲の協力あっての事だと強調されていた。
徹頭徹尾、執拗なほどにテーマが一貫しており、素晴らしかった。

作者さんの「人の絆を描く」という特徴は創作の根底にまで染み付いているように見えるので、他作品も同様に面白いんじゃないかな。

2.伏線の貼り方・活かし方が上手い。

これがマジでヤバかった。

  • あらからさまな伏線は少なく、さりげなく効果的な配置
  • 忘れている読者にもキチンと配慮
  • 伏線に振り回される事なく、目先の面白さが損なわれていない
  • 後の展開の為にキャラを動かす時も、その性格に即しており無理矢理感がない

全部成立できているの、人間か?

3.読者感情を押さえており、キャラの心情も掴みやすい

これは私が物語と相性が良かった可能性もあり。

読者にストレスを与える必要がある場合も、過度にかけ過ぎず、ちゃんと発散させる場所を作ってくれていました。
読者と作品にこういう信頼関係が築けると、どんな展開でも読み続ける事ができる。

また、主人公が怒る場面に絞っても
・本当は許したいけど我慢できない
・我慢する気も起こらない
・期待が裏切られた事による逆上
など展開によって色々あるけど、読んでいて違いがちゃんと分かるし、全てに共感できる描写で感情移入ができた。

だからキャラの感情を見失う事がなかったんですよね。
「何でこんな事を?」と思うような行動を取られる事は無かったし、そんな場合(序盤のクレア)はちゃんと後で説明が入り納得できた。
これがあるので安心して読めた。

「キャラ感情を見失わない」のメリットはかなり大きい。
割と大手作品でも「理解できない行動」で冷めちゃうケースあるので、かなりスゴイ事だと思う。

今まで上げた①~③全ての要素が成立していることで、キャラが作品の中で生きて感じられるし、好感度が高かったです。
物語の中でしっかり世界が成立しているから没入感もある。
作品に深みがあるので、「あの時のこのキャラの気持ち」とか、「描かれなかったキャラ同士の組み合わせ」とか、IFの世界線とか、ファン同士で結構語れそう。

4.一貫した作品テーマに対して、章毎に違う読み味

これもバケモノ。
前に触れたけど、章ごとで読み味が全く違うので飽きないし、定型パターンがないので先が読めない。
最後まで「今回はどういう話になっていくんだろう」と興味が継続できたので、長編作品にも関わらず「そろそろ終われ」が無かった。

にも関わらずテーマは一貫していたので、「違う話をツギハギした」という印象は一切なかった。
特に象徴的なのはザノバ編・クリフ編で、今までと全く違う方向性の話だったにも関わらず、作品テーマを別角度で見た話なので深みが増すという作りだった。
これには驚きましたね。

作品の不安要素

ここまで褒めてきましたけど、作品の不安点は「迷宮編を超えられるか」かなー。
読者に加えた事がないストレスが多重でかかり過ぎる。

パウロの死・ゼニスの心神喪失は本作で従来なかった「身内を失う事件」で、単体でもキツイのにこれが連続するもんだからショックが大きい。
これに重ねて「男はヤレば元気になる概念」「主人公の浮気」というショックを重ねてるので、耐えられない人がいても仕方ない。

先ほど「読者感情の把握ができている」と挙げたけど、ここに関しては正直、作者さんとの感覚のズレを感じました。
ただあくまで”ズレ”であって、”失敗”とは違うかな。
恐らく作者さんとしては「大丈夫だろう」と考えた展開をしており、ハーレム関連について私の感覚が作者さんの想定とズレているんだと思う。

問題の「ハーレムの必要性」については、本作においては『不要ではなかった』が『なくても描写できたのではないか』が私の結論。
ただ書籍だと挿絵があるし、アニメや漫画においては尚更そうで、お色気描写のニーズは認めるべきところ。
私個人には合わなかったけど、『それを理由に読むのを止めるのは勿体ない』というのも全て読んだ上での結論ですね。
ハーレムには肯定的ではありませんが、作品は否定しない。
私としてはこれで十分です。


細かくは色々あるけど、とりあえず初読感想としてはこんな所かなー。
うん、面白かったです。良い作品に出会えた。
“その1″から数えて、合計31,000字以上という大長編の感想になってしまったのは、やっぱり予想以上に面白かったからだな!

新型コロナウイルスの影響で延期の雰囲気も出てきているようですが、ちょうど2020年にはアニメ化も予定しているそうで。
アニメは普段観ないんだけど、無職転生は観てみようと思う。

ここまで読んでくれている方で未読の方はおられないとは思うんだけど、もしいたら漫画版1巻だけでも読んでみて!
オススメです。

フジカワ ユカ (著), 理不尽な孫の手 (その他), シロタカ (その他) KADOKAWA (2014/11/23)
理不尽な孫の手 (著), シロタカ (イラスト) KADOKAWA (2014/4/24)

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